八千代地区コミュニティFM放送事業概要説明書
(Broadcasting Business Overview Manual)

<1.はじめに>

平成23年3月11日、東日本大震災の経験から、我々は「災害」が決して遠い世界の出来事ではないということを、身を以て知りました。
また、この東日本大震災をきっかけに、災害情報の伝達がいかに重要なのかが浮き彫りとなりました。

市民を守るため重要な災害情報を、できるだけ素早く、全ての人に知らせることは防災上極めて重要なテーマであり、様々な方法が考案され、また検討されてきました。

東日本大震災において、その価値が見直されたメディアが「ラジオ」です。
新しい情報をすぐさま、常に流し続けることができる放送メディアであり、また受信装置は安価で手軽、停電時にも長時間受信可能です。
特に注目を集めた「コミュニティFM」を活用した災害FM放送は、地域に直結した重要な情報を住民に提供し続け、多くの人々を救い地域の力となりました。

<2.コミュニティFM放送局とは>

コミュニティFM(以下CFM)は、平成4年に制度化された、地域に密着したFM放送局です。
都道府県全域を対象とするFM放送(県域放送)とは異なって市町村やその隣接地域までを放送エリアとし、地域にとって身近で必要な情報を、詳しく、素早く伝えることができる放送局です。県域放送と同じ周波数帯を使用するため、一般のラジオで受信できます。
地域に密着した地元情報、行政情報に特化し、地域活性化に役立つ放送局する事ができます。
広報紙など他の手段では時間のかかる情報を、インターネットなどを利用できないお年寄りなどの皆様にも幅広く伝えることができる、優れた情報発信手段です。

地域情報やまちづくり情報など共に、豪雨などの自然災害による被害情報や避難情報、停電や交通機関の情報なども素早く伝えることができます。
本事業においてはこの優れた情報発信手段を以下のように役立てます。

<3.事業の目的・目標>

1)災害情報の発信
先に述べたとおり、CFMは災害が発生したときに大きな力を発揮します。情報発信手段にはそれぞれ長所と短所がありますが、CFMは特に
① 受信可能な全ての人たちへ(一斉性)
② 詳しい情報を(詳細性)
③ 素早く(即時性)
④ 伝え続けることができる(継続性)
という点で優れています。
行政においては携帯電話の緊急速報メールや、防災行政無線、またホームページでの公開といった情報発信手段がありますが、緊急速報メールは主に避難勧告に準ずる緊急情報を通知する初動通知手段であり、ホームページの情報は更新に時間がかかり、限られた環境でしか見ることができません。
防災情報を市民へ一斉に知らせる手段としては、スピーカーを町中に設置する方法がありますが、整備に数億円の費用を要し、また「大雨の場合など音がかき消されて聞こえない」という問題が指摘されております。個別受信機も1台数万円と高価であり、仮に全戸へ配布するとすればやはり数億円の費用がかかります。
CFMであれば整備費用は約1/10であり、家庭用ラジオやカーラジオで誰もが手軽に受信できます。
他の情報発信手段の短所を補いながら長所を最大限に生かし、市民(コミュニティ)の命と安全を守ることを最大の目的とします。

2)地域情報の発信
市民の命と安全を守るため、いざという時すぐに防災情報が市民の耳に入るためには、「普段から市民が耳にするラジオ」であることが重要となります。
先に述べたとおり、CFMは地域に密着した、身近な情報を発信できることが最大の特徴です。
県域放送では聞けないような地域情報…例えば商店街のタイムサービス情報やまちなかイベントなど、また例えば外出の機会が少ないお年寄りなども楽しめるような、ごく身近な地域情報番組や、市民リポーター・こどもリポーターによる番組制作など、CFMならではの特徴を活かすとともに、地域のきずなを深められるような企画に地域を巻き込むことにより、「地域のみんなでつくるラジオ」「地域のみんなが聴くラジオ」を目標とします。
CFMは地域情報の発信をする「わがまちラジオ」、「わがまち放送局」なのです。

3)ポイントと課題
平常時、災害時、いずれにおいても重要なポイントは「身近で役立つ情報を、素早く市民に届ける」ことです。
地域情報の発信に関しては市民や各地域団体等をまじえ、役立つのみならずまちづくりの活性化につながる番組づくりを目指します。
防災情報発信に関しては市役所、消防、警察などの行政組織をまじえ、有事の災害情報をより正確に伝える枠組みをつくるとともに、地震、台風、火事などの速報や事故の情報など、日常生活における防災情報発信にも力を入れて参ります。
考えられる課題として、FM波の特性である遮蔽物や高低差に弱いことと、CFMの制度上、出力が一般的に最大20Wという微弱な電波ということから、測定上は問題なくとも受信状態の悪いエリアが生じる可能性があります。(特に屋内でのラジオ受信では、聞こえにくい場合が考えられます。カーラジオでは多少受信環境が悪くても、屋内とは違って放送が受信できるといったことも考えられます。)
FM放送での送信以外に、ケーブルテレビによる再送信やインターネット経由での同時放送(サイマルキャスト)を行なうことなどで受信状況の悪い地域でも視聴可能な環境を整え、また防災に関しては他の手段と補完し合いながら情報発信を行なっていきます。
市民の方々にとって、ラジオ放送を聴くことが有益となるように考えて参ります。

<4.放送局の設立>

1)検討の経過概要
・平成23年度~平成26年度
有志により千葉県北西部地区においてのCFMの必要性が議論され、月に一度の会合において早期開局に向けての検討を開始。
八千代市、船橋市と連携し、またTBSラジオと共に「防災フェア」のイベントに参加、アンケートやチラシ配布にて地元ラジオ局の市民の方々にその必要性を訴え、協力体制の確認を行なう。
 開局された各地のコミュニティFMの訪問、開局に向けてのアドバイスを賜る。

2)行政との連携
放送事業を行うためには送信所(アンテナ)、演奏所(スタジオ)等の設備と、放送免許を取得し、放送局を運営する事業者が必要です。
今回のコミュニティFM放送事業においては、民間にて運営することが望ましいと考えます。しかし、民間事業者が主体に運営するとはいえ、行政の後方支援があると心強いものがあります。
それは、あくまでもコミュニティ放送を使って行政情報を放送し、その電波料を行政が払うという支援が健全だと考えます。
単なる補助金では、根拠のない予算削減が将来行われる可能性も考えられます。
 その他、送信所の場所選定、設置費の算定など行政と一体になって取り組んでいきたいと考えます。

3)業務委託
放送局は、機器の選定や操作、放送に至る様々な点で専門的知識が必要とされます。また、開局までには総務省に提出する様々な書類の作成、潜在電界調査などの一般的ではない業務も多数発生します。
そのような難解な業務の一部を株式会社TBSラジオ&コミュニケーションズの関連会社である株式会社TBSプロネックスに委託し、迅速かつ円滑に開局出来るよう指南していただきます。
安定した放送局運営と積極的な番組づくりができるようにするとともに、地域情報の発信に関し積極的な連携を行って参ります。

<5.放送局の運営>

1)聴取エリアと聴取対象者
聴取エリアは予定通りコミュニティFMの最大出力20Wの認可を得られれば八千代市のその主要エリアをほぼカバーできます。
コミュニティ放送局を開局するためには、その放送を行うための周波数の割り当てが必要ですが、「東京23区及びその周辺」、「大阪市及びその周辺(兵庫県南東部を含む。)」などの地域においては、割り当てるための周波数が逼迫している状況から割り当てが困難な状況でしたが、昨年10月に総務省が昨今の防災的観点から地域に根付いたコミュティFMの開局に向けて、既存の76.0MHzから85.0MHzの周波数帯に加え、85.1MHzから95.0Mhz帯も一部を除き解放するとの発表をしました。
このことからも開局に向けての大きな障壁が無くなったといっても過言ではないといえるでしょう。

2)収支・経営
本来CFMは、その意義や性質上、営利を目的としないものですが、安定して運営し続ける経済的基盤は必要であり、免許事業であることからも赤字だから辞めると簡単に言えない事業です。
広告費主体となりますが、中でも放送局運営に係る事業支出(特に人件費)をまかなうだけの収入は最低限必要となります。
当初は基本的な行政情報の放送を委託する市からの番組制作費と、地域の皆様の協力・協賛による収入によって支出をカバーして参ります。
本事業は、当初は知名度の無さから少人数体制によるスモールスタートとなります。厳しい財政状況のため設備に係る初期費用は最低限で、中継車や高額な現場中継機材などは計上されておりません。番組制作のための予算も最低限となっております。
放送局としてのノウハウを積み上げていくことに合わせ、また地域の皆様や八千代市とその生活圏を共にするエリアの方々のご理解とご協力を得つつ、先々にわたり運営と番組の充実、放送局としての成長を図って参ります。

3)番組づくり:地域との関わり「わがまちラジオ」「わがまち放送局」
「地域のみんなでつくるラジオ」「地域のみんなが聞くラジオ」を目標として番組作りに取り組みます。
既に神奈川県相模原市にてCFMを運営している「株式会社エフエムさがみ」の連携協力を頂きながら開局準備を進めておりますが、あわせて「開局設立準備室」を設置し、このラジオのありかたや求めるものについて地域の多くの方々や各団体の意見を頂き、具体的な番組づくりとプログラム作成を進めて参ります。
開局後も地域の方々の声を活かし、また番組への協力を頂きつつ、いっしょに番組をつくり、育てていくことを大切にします。

4)番組づくり:行政との関わり
CFMが発信する身近な情報としては、行政…役所のもつ情報も重要です。災害情報に限らず、普段の生活に関する情報やお知らせ等もこまめに伝えられるよう、組織的な連携を行って参ります。

5)災害時の運用
大規模な災害が発生した際は、市との協定に基づく臨時災害放送局として災害情報の発信に全力を注ぎます。また通常の放送に緊急割り込みをかけて災害情報をお知らせするシステム構築も可能です。
協定の締結や、各種災害情報の伝達経路・伝達ルール、緊急割り込み放送システムの導入等に関しては平成27年9月より本社を置く八千代市と具体的な検討に入り、開局時あるいは開局後の随時実現を見込みます。

<6.スケジュール>

(2015年)
8月 実地調査(潜在電界強度調査等)
10月 総合通信局事前協議・事業計画
12月 営業準備

(2016年)
1月 設備検討・総合通信局協議
2月 法人登記準備
3月 法人登記
4月 行政情報発信検討
6月 総務省経過報告
8月 行政情報及び防災情報発信検討・免許申請書申請
9月 予備免許付与・演奏設備設置工事
10月 運用操作研修・番組制作研修
11月 送信設備設置工事

2017年9月17日13時 開局予定